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最初は娘の意識
そしてまた別の誰かの意識……
意識は混じり合う

特異点2069

~大人になった子どもたち編~

2024年12月発行 460円
うだりお 表紙 電子書籍 長編小説 特異点 2069 大人になった子どもたち 近未来 シンギュラリティ アダルトチルドレン 意識の世界

物語

意識の解明に その生涯を捧げた 富田義孝先生に捧ぐ

時は2069年。国の人口が8000万人を切り、そのうちの半分以上が70歳以上の高齢者という時代。フジサキ法の成立により、企業が作り出した人間である『企業産』と、自然交配によって生まれた『自然交配型』の2種類の人間が入り混じる社会で、人工胎生企業大手スマートジェネティクス社の研究員である早見凛太朗は、退職を目前にした日の朝、一本の電話を受ける。電話をかけてきたのは、スマートジェネティクス社が生み出した企業産人間、柴崎望。柴崎は付与した超人遺伝子が一つも発現しない落ちこぼれGMCと長年考えられてきたが、早見はそれらがどうやら機能し始めているらしいと気付く。皆が待望した『心』を持った超人の目覚めである。

そこで早見はかつての同僚である萩谷真に協力を依頼する。しかし萩谷はエスウイルス治療薬の研究開発業務に追われていた。萩谷にはどうしても治療薬『ザイン』を完成させなければならない理由があった。ところがザインの治験中に治験参加者の一人に危篤な副作用が見つかってしまう。薬剤性せん妄――小倉研から移送されてきたエスウイルス患者、巻はる子にせん妄の症状が出ていた。

 

一方で、カミナリから抹消されたサムとケンは正体不明の怪人『アヤンクマル』を探していた。アヤンクマルには、この世の物理法則を無視して物を変形させたり、移動したりできる力があると噂されている。アヤンクマルを映したとされる一本の動画を頼りに、二人は動画の撮影者を知る人物に会いに行くが、そこで二人はその人物がカミナリの一員であることを知り、不安と興味を募らせていく。

 

本作は「特異点2069~稠林の迷い子編~」に続く第5弾。特異点シリーズの完結編です。

 

本作では、1作目の主人公『柴崎望』、2作目の主人公『巻はる子』、そして4作目の主人公である『サム』の三人が、それぞれに運命の糸を引き合いながら特異点の世界をひも解いていきます。

 

特異点の世界とは一体何だったのか――。

 

奇妙で摩訶不思議な出来事が多発するディストピア小説を最後までお楽しみいただければ幸いです。

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※ギャラリーにて使用される画像の著作権は各著作者に帰属します。

登場人物

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​柴崎望

SmartGenetics産GMC。期待された能力が発現しなかった企業産落ちこぼれ。親という未知の存在に対する愛憎に苦しむ。SmartGeneticsJapan取締役、九鬼清志郎を狩ったことで健楼会と警察に追われている。消極的で悲観的。神の存在や奇跡を信じている。

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巻はる子

HIA産GMC。公安警察官。優れた映像記憶能力を持っていたが、エスウイルスに感染し老化が進行中。現在はSmartGenetics社の地下研究所に幽閉され治験薬を試されている。藤崎幸大失踪事件の唯一の目撃者。自身の将来に深く絶望している。

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​サム

年齢・出生不明。元カミナリの喉。高度な毒耐性、痛み耐性、意識的な傷の修復や顔の変形など超人的な力を複数有する。額に第三の目があり、物体の浮上や消去などの超能力も持っている。カミナリの覇権争いで別グループによりこの世から抹消された存在。アヤンクマルを探している。

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アヤンクマル

VRネット上の架空の人物。2023年のナイリーズサーバー事故を起こした犯人と噂されているが、誰も見たことはない。

注)GMCはGenetically Manipulated Childの略

  HIAはHuman Intelligence Academyの略

※画像は本作品におけるイメージです。被写体と本作は関係ありません。

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本作に込めた思い

特異点シリーズ完結編となる本作は、特異点の世界の終焉を描いています。

特異点の世界は完全完璧な世界です。そこでは時間が流れ、人々が意思を持って相互に影響し合います。稀に世界のバグとも呼べる奇妙なことは起こりますが、それらを除けば、目を覚まして、食事をして、仕事をして、と永続的な社会が存在しています。その半永久的に続く世界をどうやって終わらせようか、これが私が最初に考えたことでした。

特異点の世界はもちろん私の頭の中にある世界です。終らせようと思えばいくらでも終わらせ方はあります。ただ、特異点の世界は、私が考える現代社会の課題を詰め込んだ世界でもあります。

これまでの特異点シリーズにおいて、私は『孤独』、『不安』、『嫉妬(苛立ち/怒り)』、『不信感』をテーマに描いてきました。そのため、私たちが今生きている世界では難しくても、少なくとも特異点の世界ではこれらを解決して終わりたい、そう思いました。

怒りや寂しさ、不安や不信感はどうしたら減らせるのでしょうか?

これには個々人の問題であったり、社会的な要因であったり、様々な理由があって難しそうです。でもこれらの対極にある感情、具体的には、喜びや安心、信頼感はどうしたら増やせるのか、こちらを考えるのは比較的簡単そうです。なぜなら、喜びや安心、信頼感は一人では感じることはできないからです。これらの感情は、誰かがいて初めて感じることができる感情です。誰かがいて、ああ、あなたは嬉しかったんだね、哀しかったんだねと、ともに泣いたり、ともに笑ったり、自分の中の感情を共有してくれるから、喜びや安心、信頼感が生まれるんだと思います。

本作のラストで、特異点の世界は終焉を迎えます。でもそれはただの終焉ではありません。それは私たちが生きている今の世界へと続く終焉なんだと、そう思っていただけたら幸いです。
うだりお 表紙 電子書籍 長編小説 特異点 2069 大人になった子どもたち 近未来 シンギュラリティ アダルトチルドレン 意識の世界

特異点2069

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