物語
2038年4月、「ヒトの遺伝子操作に関する法律」、通称「フジサキ法」が施行される。これにより、遺伝的疾病の回避を目的とした遺伝子操作が可能となる。
2042年1月、「先天的遺伝子異常における医療的遺伝子操作に関する法律」が施行される。これにより、これまで難病とされてきた先天性疾患の治療が可能となる。
翌43年、「フジサキ法」が改正され、遺伝的疾病の回避目的以外でも、生殖細胞系列の遺伝子操作が可能となる――企業が子どもを作る時代の到来である。
時は2069年。国の人口が8000万人を切り、そのうちの半分以上が70歳以上の高齢者という時代。フジサキ法の成立により、企業が作り出した人間である『企業産』と、自然交配によって生まれた『自然交配型』の2種類の人間が入り混じる社会で、フジサキ法の生みの親である藤崎幸大は、人類史上もっとも神に近い企業産人間『超人マカ』の誕生に胸を躍らせていた。ところが世話になっていた久米の死をきっかけに、藤崎の過去が少しずつ周囲に知られていく。藤崎には誰にも言っていない秘密があった。それは、フジサキ法は藤崎が作ったものではなく、ネット上の架空の人物『アヤンクマル』からの贈り物だったということ。アヤンクマルは言った、「超人を作りなさい」と。その言葉通り、人生をかけて超人の開発に取り組んできた藤崎は、『超人マカ』の誕生を目前にして、再びアヤンクマルの影に怯えていく。
アヤンクマルは実在するのか。実在するとしたら、一体誰なのか。
迫りくるシメイジングバイルスの脅威。マカの異変。そして頻発する不可解な停電……。
健楼会、大企業の重役、政治家、エリート政策立案士と、国を動かす力を持った人間たちによる権力闘争の末に、藤崎が見つけたこの世界の真理とは何だったのか――。
本作は「特異点2069~シメイジングバイルス編~」に続く第3弾。特異点の世界観を存分にお楽しみください。
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登場人物
藤崎幸大
SmartGeneticsJapan取締役。健楼会相談役。元厚労省大臣官房審議官・医薬衛生局長。フジサキ法の制定により厚労省を追われ、現在は社において超人プロジェクトを指揮する。車椅子。論理的で高慢。時間を正確に測れる。
九鬼清志郎
SmartGeneticsJapan取締役。健楼会理事。藤崎幸大の右腕。藤崎とともに超人プロジェクトに携わる。寡黙で真面目。冷静沈着。警戒心の塊。藤崎同様に足が悪い。藤崎に従順だったが、停電を機に豹変する。
栗田あゆむ
SmartGenetics産GMC。集中力、暗記力、数学力、総合IQの向上が遺伝設計された汎用タイプ。生前の記憶を持つ『神の子』。アヤンクマルが見えると口にする。
アヤンクマル
VRネット上の架空の人物。2023年のナイリーズサーバー事故を引き起こした犯人と噂されている。
注)GMCはGenetically Manipulated Childの略
※画像は本作品におけるイメージです。被写体と本作は関係ありません。