皆さん、こんにちは! いよいよ今年も残すところあと一ヶ月となりました。寒い日が続いてますが、お変わりはありませんか? さて、今日は新しい短編のお知らせです。タイトルは『薔薇とチョコレート』。
なんだか甘い香りがしてきましたが、中身はちょびっとほろ苦いです。
久しぶりの短編ですね。早いもので、今回の短編が三作目となります。 本作は、子供のいる夫婦の結婚生活にまつわるお話です。結婚していない方は、こういう結婚生活もあるんだという読書体験に繋がったら幸いです。また『プラスチックハート』や『水木金の香り』もお勧めです。
本作の主人公は、40を過ぎた男とその妻です。年明けまであと3日となった年末のある日、男は会社の納会を早々に切り上げ、帰路に着きます。いつも通りの街並みといつも通りの地下鉄の階段。ただ一つ違うのは、今日が仕事納めの日だということ。 男は空を見上げます。そして妻を思います。なぜそうしたかは、読んでもらうとして、物語は妻との思い出の回想でつながっていき、男の帰宅で終わります。 作中を通して描かれるテーマの一つに「報われる」という考え方があります。 皆さんは、どんな時に報われたと感じますか? 必死で勉強して成績が上がった時。 頑張って減量して目標体重に達した時。 一生懸命やってきた仕事が実を結んだ時。 色々あると思いますが、我慢強くやったことに対して、それ相応の報酬を得た時に、人は報われたと感じるのではないでしょうか。「報われる」とは、承認欲求が満たされ、ゆっくりと達成感に浸ることで、次へと繋がる自信を得ることができる、非常にパワフルでユニークな幸福体験の一つだと思います。 しかし世の中には、同じことをしていても報われたと感じない人がいます。報われないことの方が当たり前なんだ、そう思っている人もいます。 本作の主人公も、報われない男です。会社でも、家でもそうです。初めから期待値を下げて、報われなくてもいいんだ、そう自分に言い聞かせて生きています。 結婚とは鳥かごのようなものだ。かごの外の鳥は餌箱をついばみたくて中へ入りたがり、かごの中の鳥は空を飛びたくて外へ出たがる(ミシェル・ド・モンテーニュ) そしてまた今日も、中の鳥たちはピーチクパーチクと喧嘩を始める。 夫婦喧嘩というのは、本当に些細なことから始まりますね。それは相手の言い方であったり、言葉の選択であったり、態度であったり。相手に好かれようと全力で魅力を振りまいていた独身の時とはまるで違います。 また、ある人はこうも言います。 妻は優しくされることを望んでいるだけではない。優しい心で理解されることを望んでいる(瀬戸内寂聴) 長い結婚生活では、環境が変わり、それぞれが変わり、そして二人の関係も変わっていくものです。しかし同時に、変えてはいけないものもあります。そしてそれは前述の「報われる」とも大いに関係しているのです。 奥さんの好きなものは何ですか? 旦那さんの好きなものは何ですか? クリスマスも近いですし、パートナーにささやかなプレゼントを贈ってみるのもいいかもしれませんね。 試し読みはこちらから。