皆さん、こんにちは!
季節も秋に差し掛かり、日が落ちるのも早くなってきましたが、いかがお過ごしですか?
今日は新刊のお知らせです。
昨年3月からWeb上で連載してきた小説『盈月をとる』が、上下2巻から成る電子書籍として以下のストアから発売されました!
ただ今、9月30日まで上巻99円のセール中ですので、この機会にぜひ、その手に取って読んでみてください!
さて、今回の小説『盈月をとる』は、小学校6年生の釣り少年『陸』とベトナム人技能実習生『クオン』の心の交流を描いています。技能実習制度については、既に多くの議論が交わされ、制度の問題点なども多々指摘されていますが、本作の舞台は2012年、まだこの制度が社会問題化する前です。
陸は地元でも有名なバス釣り少年で、家の近所にある霊鎮湖に通い、毎日のように釣りをしています。その目的は、霊鎮湖に住むと言われている金色に輝く魚『盈月』。陸は市販のルアーでは飽き足らず、自作のルアーを使って盈月を追いかけていきます。
一方で、来日2年目の技能実習生であるクオンは、技術と日本語を習得するために日々工場で働く実直で真面目な青年です。クオンはその生真面目さゆえに、職場環境や待遇に不満を持ち、それを自分の力で変えていこうとしていきます。
二人は出会い、徐々に仲を深めていきますが、クオンの取ったある行動を機に、陸はクオンから逃げ出します。そしてそれが陸の心に深い傷となって残ります。
本作は、陸とクオン、二人の心の動きに焦点を当てて描いていますが、その背景にあるものは『バス釣り』です。
ブラックバスは特定外来生物に指定されている外来魚です。在来魚を捕食し、生態系を大きく変えてしまう害魚だと言われています。本作では、その外来魚の象徴として『盈月』が描かれています。他とは一線を画する巨大な魚体、そして目を奪うような特異な体色――。盈月という言葉は、新月から満月に至るまでの間の月を指す言葉ですが、本作では『成長途中』という意味合いが込められています。
本作の主人公である陸は12歳です。12歳と言えば、思春期の初めです。自分の体に変化が起き、自己の考えが芽生えてくる頃です。親の存在が鬱陶しくなり、そうかと言ってその親に助けられて生きていることに矛盾を感じ、心の葛藤が起こり易くなる時期、それが思春期だと思います。
陸は自分の中に思春期の魔物を飼っています。そしてそれが原因で、クオンから逃げ出します。
どうしてそうなったのか。
『盈月』とは何だったのか――。
大人になった陸と一緒に、そんなことを考えてもらえたら嬉しく思います。
バス釣りに興味がある人も、ない人も、ぜひその手に取って読んでみてくださいね!
作品概要と試し読みはこちらからどうぞ。