皆さん、こんにちは。
先日、近所の公園を歩いていると、ざくろの実が地面に落ちていました。ざくろなんて懐かしいなと思って手に取ると、真っ赤に熟れ、ぱっくりと割れた硬い果実からは赤い粒々の種が覗いていました。一粒を手に取って食べてみると、ほんのりと甘酸っぱくて、野性的なえぐみがありました。生ぬるいアセロラドリンクのような味。それを食べたら、自分の中の何かが変わって、もう二度と元には戻れなくなりそうな味。
近くにいた子供に「食べる?」と聞いたら、嫌そうに顔をしかめて首を振っていました。 地面に落ちていたなんだか得体の知れない不思議な果実。 見た目がおどろおどろしく、とても美味しいとは思えない果実。 誰が食べようと思うでしょう。
それを食べたことのある人だったら「美味しいのは知っているけど、それはちょっと……」となるかもしれません。それはそうでしょう。地面に落ちていたものですから。
では木になっている実をもぎ取って「食べてごらん」と言ったらどうでしょうか。 もしかしたら「お腹すいてない」と言うかもしれません。 もしかしたら「○○なら食べるかも」と身代わりを連れてくるかもしれません(笑)。
そこにあるのは、「美味しい」と納得・共感して欲しい感情と「食べたくない」という意思の攻防です。
感情と意思は似て非なるものですね。感情はその人の心の持ち方やあり方である一方、意思はその結果生じたその人の考えそのものです。そして世の中では、この感情と意思の攻防がありふれています。
そんなことを考えながら、子供に差し出したざくろの実を口に入れると、やっぱり甘酸っぱくて、ほのかにえぐみが残りました。
そう言えば、こんな味だったね……。 まるで子供の頃の自分と再会したような懐かしい気持ちでした。
さて、連載小説『未題』、第3回『再会』を公開しました。 https://www.riouda.net/saikai
どうぞ良い週末をお過ごしください。
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