皆さん、こんにちは。
11月に入りました。明治神宮では銀杏の木が色づき始め、そろそろ紅葉の季節となってきましたが、皆さんはいかがお過ごしですか。
さて今週は、日米で行われた行動経済学のとある実験結果についてシェアしたいと思います。
行動経済学とは、経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法のことです(Wikipedia)。
1997年、筑波大と都立大、そして南カルフォルニア大とパーデュー大の学生にあるゲームをさせました。
それは2人で対戦するゲームです。
・あなたも相手も10ドルずつお金を持っていて、0~10ドルの範囲で場にお金を出し合います。
・場に出したお金の1.5倍、あなたも相手も受け取ることができます。
簡単ですね。あなたも相手も10ドル全て出せば、場に20ドル。つまり、あなたも相手も20ドルの1.5倍、30ドルを手にすることができます。
でもたとえば、あなたが10ドルより少ない金額を出したとします。たとえば5ドルとしましょう。相手は10ドル。すると場に15ドル。あなたは15ドルの1.5倍、つまり22.5ドルと残りの5ドルを合わせて、27.5ドル。相手は全て場に出してしまったので22.5ドルだけです。あなたの方が相手よりも5ドル多く手に入れました。
最大の利益(30ドル)を得るには、Maxの10ドルをお互いに出した方が良いに決まっています。でもそのためには、相手も10ドルを出さないと、あなたは相手よりも少ない金額を手にすることになります。つまり相手よりも少ない金額を出した方が得だということです。
①最終的に得ることのできる金額が少なくなっても、相手より少ない金額を出すか。
②それとも、どちらも得をするMaxの10ドルを出すか。
皆さんならどちらを選びますか?
結果を言うと、日本の学生はアメリカの学生に比べて、①を選ぶ比率が高かったそうです。
相手を出し抜くことを選んだ学生が多かったということです。
このように、相手に出し抜かれるくらいなら、自分が損をしてでも相手をおとしめたい心理を『スパイト行動』と呼ぶそうです。スパイトとは、悪意や意地悪を意味する英語の『Spite』から来ています。
このスパイト行動、実は私たちの周りにたくさん潜んでいます。
楽しそうにしている友人の悪口を言ったり、新しいことを始めようとする人の足を引っ張ったり。有名人の不祥事をここぞとばかりに叩いたり、自分はこんなに苦労したんだと、立場の弱い人を理不尽に説き伏せたり……。
出る杭は打たれる。村八分。同調圧力。空気を読め――様々な言葉がこの心理の一面を現しているようにも思えます。アメリカ人、カナダ人、中国人など他国と比べて、日本人学生が①を選ぶ人の割合が高かったことからも、これはもう、民族としての気質なのかもしれません。面白いですね。
興味を持った方は記事のリンクを貼っておくので覗いてみてください。
さて、連載小説『特異点3』、第23回『もう一人の自分』を公開しました。
今週も良い週末をお過ごしください。
Photo by Gerd Altmann
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