皆さん、こんにちは。
刻一刻と年の終わりが近づいてきましたが、皆さんはいかがお過ごしですか。
いつの間にか、風が冬のそれに変わって、どこまでも続く青空を見上げていたら、子どもたちがまだ小さかった頃に一緒に凧揚げをしたことを思い出しました。
その日は雲一つない晴天で、風がびゅうびゅうと吹いていました。
近所にある都市公園には大きな芝生の広場があって、そこではお年寄りや親子連れがベンチで休んだり、ボールで遊んだりして休日を楽しんでいました。
空にはたくさんの凧が浮かんでいました。
空高く見えないほどに上がった白い凧、変わった形の色鮮やかな凧、和凧に連凧。広場には凧揚げ名人といった風貌のお年寄りがたくさん集まっていました。
私も子どもたちと一緒に凧揚げをしていたのですが、市販のビニル製の凧は想像以上に揚げるのが難しく、広場を縦横無尽に走り回っていました。でも凧は中々揚がらず、子どもたちは途中で飽きてしまいました。
すると、近くにいたお年寄りから「走るな!」と怒鳴られました。
「そんなに走らなくても上がる」とお年寄りは言うのです。
今思えば、その方は怒鳴ったわけではなく、ただ大声を出しただけだと思いますが、当時の私は怒鳴られたことに腹を立て、お年寄りを無視して走り続けました。
でも凧は地上から5メートルくらいのところをくるくると回転してすぐに落ちてしまいます。それでお年寄りに目をやると、その方は凧が小さく見えなくなるほど高く、悠々と空に凧を留めていました。
私は試しに、子どもに凧を持たせて、123の合図で手を離すように言いました。糸をぴんと張って風を待ちました。そして123の合図で糸を引くと、凧はすうっと揚がっていきました。凧揚げは、無闇に走るよりも風を「掴む」ことが大切なんだと知った日です。
あの時のお年寄りの顔は覚えていません。でももっと心を開いてこちらから話しかければ良かったなあと今は思っています。
新しい正月、皆さんも凧揚げに挑戦してみてはいかがですか?
さて、連載小説『特異点3』、第30回『世界の裏側』を公開しました。
今週もどうぞよい週末をお過ごしください。
Photo by Stefan Keller
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