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執筆者の写真うだりお

連載小説『特異点4』、第1話『白い光』を公開しました!

皆さん、こんにちは。


4月に入り、周りの景色が春らしくなってきましたが、皆さんはいかがお過ごしですか。

先日、近所を散歩していたら、側溝の隙間に蟻の巣穴がこんもりと盛り上がっていました。道端にはポピーやたんぽぽも咲き始めて、これで暖かければまさに春爛漫といった様子ですが、私はまだダウンジャケットを手離せません。早く暖かくなって欲しいものです。


さて、先週お伝えした通り、今日から新しい連載小説『特異点4(仮)』を開始します。

本作は特異点シリーズの4作目ということで、関東カミナリのリーダー『サム』の視点で特異点の世界を描写していきます。1作目は淡水マグロの試験係『シバ』、2作目は公安警察官『はる子』、3作目はスマートジェネティクス社取締役の『藤崎』の視点で物語を進めてきました。今回はどのようなストーリーになるのか、楽しみにしていただけたら嬉しく思います。


まだ特異点シリーズを読んだことのない方のために簡単に説明すると、特異点の世界は今から50年後の未来です。


国の人口が8000万人を切り、その半分が70歳以上の高齢者、25歳以下の若者にいたっては200万人しかいない社会が舞台となります。そこでは国の税収が低下し、地方行政は機能不全に陥っています。バスや電車は走らず、街にはゴミが溢れ、落書きが残ります。都市部でさえビルは廃墟と化し、売れ残った家屋やアパートは取り壊されることなく残っています。学校は機能せず、教員も足りていない。大学の数は減り、授業では将来に役に立つ数学や物理、外国語といった教科のみが教えられる。すると若者は将来を悲観し国外に移住し、ますます若者人口は減っていく。


そうした状況の中、政府はついに、禁断の「遺伝子操作」に手を着けます。企業に子どもを作るよう要請するのです。さて、社会には企業が作った子どもである企業産人間と自然交配により生まれた自然出生児が混在するようになります。あいつは企業産、あの子は自然出生児。人々は自分と違う人間を敵視し、機能不全に陥った社会を彼ら彼女らのせいにします。そうなると当然、自分の身を守るために自分と同じ集団に所属しなければなりません。貧困層、富裕層。若者、高齢者。そして企業産人間と自然出生児。社会は様々な集団に分断され、それぞれがそれぞれの正義を主張する――それが特異点の世界です。


これだけ読むと、なんだかとても暗い世界ですが、どんな世界であっても、そこに生まれた以上はそこで生きていかなければなりません。そこに生きる希望を見出して、前に向かって進んでいくよりほかありません。お金、名声、自己実現。理想、尊厳、自己保身。仲間、家族、自分にとって大切な人。何のために生きるのかは人それぞれです。


シバはまだ見ぬ母親を生きる目的としました。

はる子は仕事を通した自己実現を生きる目的としました。

藤崎は自己の尊厳、そして理想を生きる目的としました。

ではサムは、何を生きる目的としたのでしょうか。


それは本作を読み終えてからのお楽しみです。


それでは、


連載小説『特異点4(仮)』、第1回『白い光』


どうぞお楽しみください。



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